防水工事の工法 【ウレタン防水】
以前、防水工事の1つ[FRP防水]について解説しましたが、今回は【ウレタン防水】の工法についてお話したいと思います。
【ウレタン防水】とは・・・
【ウレタン防水】とは、どんな形状の場所でも使用でき、耐久性が高く、費用を安くおさえられる(施工場所や工法によります)というメリットがあることから、多く採用されている防水工事です。
まさにオールマイティーな工法で、最近は主流になっています。
マンションや陸屋根、階段、平らな屋上、ルーフバルコニーなど、あらゆる場所に施工されており、歩行用から運動用まで様々な仕様目的に対応できています。
素材はポリイソシアネート(塗料、接着剤の硬化剤の原料として用いられる)を主成分とする主剤と、ポリオール(アルコールの一種)を主成分とする硬化剤を、撹拌して塗膜します。
下地の形状に馴染みやすく、水密性が高い連続皮膜が得られるのが特長で、一言で言うと、下地に塗るだけで防水層を形成する工法です。
(塗るだけと言っても、プライマー、下塗り、中塗り。上塗りと4工程あります)
【ウレタン防水】の工法は3つ
一口に【ウレタン防水】といっても、さまざまな工法があります。
通気緩衝工法、密着工法、絶縁工法の3つです。
適切な工法を選択しないと、亀裂が入ったり、防水層がふくれ上がったりなどのトラブルに見舞われ、雨漏りの原因となってしまいます。
場所にあった工法を選びたいところです。
通気緩衝工法
通気緩衝工法とは、片面に溝の入った『通気緩衝シート』と呼ばれるシートを下地に張り付けて、その上からウレタン塗膜防水材で一定の厚みを保ったまま均一に流し込み形成していく工法です。
そして、継ぎ目のない塗膜をつくることによって、防水層を作ります。
雨などの上部からの水分をカットしてくれるとともに、膨れ上がりの原因となる下地に含まれる水分や蒸気化した水分を、脱気装置にて外部に排出します。
初期費用は他の工法に比べて高くなりますが、雨漏りなど、水分の含んだ下地にに最も効果的な工法です。
築年数の長く経っている建物や、面積の広い陸屋根などの環境では、施工面から水分を完全に除去することが難しい場合が多いため、通気緩衝工法が適しているとされています。
↑この筒が脱気装置
密着工法
密着工法とは、下地に液体ウレタン塗膜防水材を直接塗布し、メッシュのような補強布を張り付けて、その上から更にウレタン防水材を所定の厚さになるまで塗り重ね、防水層を作っていく方法です。
下地の形状によくなじみ、密着性に優れています。
建物への負担も少なく、既存の防水層の重ね塗りも可能です。
ただし、施工面が完全に乾燥していない場合、ウレタン防水材で蓋をしてしまうと水分の逃げ場が失われるため、日差しなどで温められた水分が内部で膨張して膨らみや亀裂の原因となることがあります。
工面全体が十分に乾燥しているという条件を満たすうえでは、密着工法が適するのは、ベランダやバルコニーなどの比較的面積の狭く、全面をケアしやすい場所ということになります。
絶縁工法
絶縁工法とは、防水層を直接下地に密着させない状態で導入する工法です。
改質アスファルトシートなどのシートを下地の上に敷いて、その上に防水層を作っていき、下地と防水層の間にもう一つ層を挟み込むことで、直接触れない形にします。
このアスファルトシートは湿度や水分の影響を受けにくく、膨張(気泡)やひび割れなどの問題が起こりにくくなるのが大きな特長です。
ですが、工事が複雑なのでコストがかかってしまい、また、対応できる業者が限られてしまうという難点があります。
【ウレタン防水】の特徴
<メリット>
どんな場所でも施工できる
ウレタンは液体状の材料のため、施工場所に物があったり、別の素材の旧防水層があっても、その上から施工できて、しかも軽量です。
複雑な形状箇所や施工しにくい所にも向いています。
また、継ぎ目のなく綺麗な平らに仕上げることができます。
臭いがしない
FRP防水とは違って、キツい臭いの発生がありません。
最近は「環境対応型」の材料もあり、だいぶ抑えられています。
また、熱の発生もないので周辺環境にも優しい工法です。
短期間で作業を終えれる
防水の改修工事としては、簡単な工事であり、工法、規模によっては工期も短期間で済みます。
重ね塗りができる
次回の防水改修工事の際に、既存のウレタン塗膜防水層を撤去することなく、そのうえから新しい【ウレタン防水】を塗り重ねることが可能です
また、高性能のウレタンを重ね塗りして弾性を高めることができます。
環境に優しい!
撤去する廃材も出ないので、環境保全・産廃処理の観点からも優れています。
トップコートのカラーが豊富!
表面(保護仕上げ剤)の色を自由に選ぶ事ができます。
取り扱い業者が多い
施工が難しくないため、取り扱い業者が多いです。
業者によっては利用する材料、サービス、金額がバラバラなので、いくつかの業者から見積りをとり、アフターフォローなども含めて比較されると良いでしょう。
<デメリット>
手作業・・・職人さんの腕にかかってる?!
職人さんが手で塗りますので、100パーセント完全に均一にはなりません。(専用の機器を用いれば最小限に抑えることができます)
乾燥に時間がかかる⤵
FRP防水に比べると乾燥に時間がかかります。
その間歩けないので、マンションの廊下などには不向きです。
トラブルが多い⤵
【ウレタン防水】は取り扱う業者も多いのですが、それだけトラブルが多いとも言われています。
【ウレタン防水工事】のはずだったのに、実際はトップコートの塗り替え工事だけだったなど、完成後正しく施工されたのかの判断がしにくく、専門知識のない悪徳業者が潜んでいる可能性も高い、という面があります。
トップコートの塗り直しが必ず必要
どの防水工事でもありえる事ですが、定期的なメンテナンスは必要です。
【ウレタン防水】は軽い素材なので、経年劣化と亀裂に弱く、6年~8年に1回はメンテナンスが必要と言われています。
また、ベランダなどでプランターなどを置いている場合、微生物のたっぷり棲んでいる土は、ウレタンを劣化させる原因になるため、定期的に掃除しましょう。
他の防水方法との比較
㎡あたりの単価、耐用年数、工期についてまとめました。
耐用年数内でも、それぞれ5年前後のメンテナンスが必要です。
種類 |
単価(㎡) |
耐用年数 |
工期 |
ウレタン |
約3,000~7,500円/㎡ |
10年~14年 |
3~10日 |
FRP |
約4,000~8,000円/㎡ |
12年~20年程度 |
1~2日 |
塩ビシート |
約3,500~7,500円/㎡ |
10年~20年 |
1~4日 |
ゴムシート |
約2,500~7,000円/㎡ |
10年~15年 |
1~4日 |
★ まとめ ★
① 【ウレタン防水】はどんな地形の建物にも施工でき、
最もポピュラーでオールマイティな防水!
② 以前作った防水層の上に重ね塗りができる!
③ 環境に優しい!
④ 長持ちさせるには施工面を清潔に保つお手入れが大事。
➄ 業者、工法が多いため、迷いやすい。
数社から見積りをとり、内容や実績を比較する。
【ウレタン防水】はさまざまな場所を選ばず施工ができる優秀な防水材ですが、費用を抑えて長持ちさせるには、特徴とお手入れの方法をしっかり把握しておくことも大事ですね。
大切なお家と財産を雨漏りから守るためにも、最適な防水工事を目指しましょう。
御覧いただきありがとうございました。