防水工事の工法 【FRP防水】
【FRP防水】の施工は、はじめにポリエステル樹脂を塗布し、その上にガラスマットを貼り付けていきます。
そこに防水用ポリエステル樹脂を染み込ませていき、硬化させる方法です。
その後、必要量のポリエステル樹脂を塗布していき、最終的にFRP系防水層を形成します。
以前、ベランダの防水工事についてお伝えしましたが、今回は防水工事の工法の一つ【FRP防水】について掘り下げて解説したいと思います。
FRPとは・・・・
FRPとは繊維強化プラスチックス(Fiber Reinforceed Plastics)の略で、つまりは繊維とプラスチックの複合材です。
繊維が入っていることにより、プラスチック単体では耐えることができない引っ張りなどに、耐え得る材料です。
繊維に使われる物質にはガラスの他、炭素繊維が用いられることもあります。
建物の防水ですと、ガラス繊維とプラスチックの組み合わせが用いられます。
FRPはプラスチック材料の中でも耐衝撃性に強く、軽量で耐水性に優れています。
FRPの主な用途・・・意外なものにまで!
見た目がプラスチックなので他の樹脂製品と一緒になりがちですが、とても頑丈です。
身近なものだと建物材では駐車場、屋上、バルコニー、
成形品ではボート、屋外に設置されているベンチ、自動車のボディパーツ、貯水層、浄化槽、バスタブ、ヘルメットなど・・・
強度に優れているという点で、深海で調査活動を行う「しんかい6500」の外郭、人工衛星の素材としても用いられています。
また、屋上緑化にも【FRP防水】は用いられており、植物の根にも屈しない強さを持っています。
貯水層、浄化槽などに使用されているという点でも、水は決して漏らさないぞ!と太鼓判の押せる材料です。
FRP防水の特徴
《メリット》
FRPの特徴は、他の防水材とは比較にならない程高硬度で、耐衝撃性・耐摩耗性に優れており、劣化や錆にも強いです。
上記にも書きましたが、さまざまな用途に利用できます。
① 保護層が不要!そしてすぐ乾く!
屋上の防水として使用した場合、防水層の上にトップコート仕上げを行う露出仕様でも、人の歩行が可能となります。
通常は防水層の上にコンクリート層を設けたり、あるいはタイルのようなもので仕上げる必要があるのですが、【FRP防水】の場合は、そのような保護層は不要となります。
また、塗膜の硬化スピードが速いので工程が短く済みます。
万が一、不具合があった場合も防水層が露出しているので、発見と補修が短時間でできます。
② 継ぎ目の無い美しい仕上がり!
施工時に、基本は防水する場所に繊維となるガラスマットを敷き、液状のポリエステル樹脂を塗布して硬化させます。
シート防水などのように継ぎ目ができず、素材そのものに柔軟性もあるため、複雑な形状のところにも滑らかな防水層を作ることができます。
③ FRP防水は車が乗り入れても大丈夫!
深海や宇宙でも対応できるさすがのFRP、もちろん自動車の走行にも耐えられる強度があります。
平に綺麗に形成できるのもあり、大型ショッピングセンターの屋上駐車場にもよく使用されています。
④ カラーバリエーションが豊富!
トップコートのカラーバリエーションが豊富で、用途に応じて様々なカラーを楽しむ事ができます。
最近はバルコニーを寛ぎのスペースとして利用する方も増えていますが、そういった場合でも好みの色で対応できる所が魅力でもあります。
➄ 初期費用は高いが・・・
ウレタン防水、シート防水に比べると施工費用が高いのですが、定期的にトップコートを塗る事で長期なコストパフォーマンスの向上が可能です。
《デメリット》
しかし、世の中には【FRP防水】が向かない場所や建物が存在します。
① 伸縮性が無い⤵
FRP自体の特性として伸縮性がほとんどありませんので、変形量が少ない鉄骨造やコンクリート造の建物に向いています。
変形量が多いとされる木造住宅では、特別に大きなバルコニーやベランダとなると、地震や強風などの建物の変形時に【FRP防水】は縮まないし伸びないので、ひびが入ったり割れたりする可能性があります。
② 紫外線に弱い⤵
また、基本的にプラスチック素材なので、長時間の紫外線に弱く、劣化してひび割れてしまうことがあります。
そのため定期的にトップコートを塗りなおす必要があります。
③ 臭う⤵
FRPは樹脂を使用しているため硬化するまでに化学物質が発生します。
この化学物質が強烈な臭いを発します。(環境対応型もあります)
④ 施工費用が高い….
メリットでも解説しましたが、初期費用がウレタン防水、シート防水に比べると平米あたり500~1,500円程度高くなります。
例で言うと、ベランダやバルコニーは10㎡程度ですので、総額で5,000円~15,000円程高くなります。
他の防水方法との比較
一般的に防水工事には、下地と防水層を密着させる密着工法と、下地と防水層の間に通気層を設ける通気緩衝工法があります。
下地と防水層の間の湿気を排出できる通気緩衝工法の方が耐用年数は長くなりますが、施工費用も高くなります。
種類 |
単価(㎡) |
耐用年数 |
工期 |
FRP |
約4,000~8,000円/㎡ |
12年~25年程度 |
1~2日 |
ウレタン |
約3,000~7,500円/㎡ |
10年~14年 |
3~10日 |
塩ビシート |
約3,500~7,500円/㎡ |
10年~20年 |
1~4日 |
ゴムシート |
約2,500~7,000円/㎡ |
10年~15年 |
1~4日 |
FRP防水のメンテナンス方法
基本的に約7~10年ごとにトップコートを塗り替えて、紫外線による劣化を防ぎます。
環境と立地にもよりますが、メンテナンスをした場合の寿命は25年程度です。
寿命を迎えた場合でも表面の状態が良好ならば、その上に再度、FRP防水層をつくることも可能です。
下地や表面の状態が悪い場合は、剥がして再度【FRP防水】か他の防水工事を選択できます。
FRP防水のまとめ
・FRPとは繊維とプラスチックの複合材
・FRPは身近なものにも使用されています
・【FRP防水】では滑らかな防水層を形成でき、屋上駐車場の防水層に使われるほど頑健で、
錆びない・腐食しない、その上軽いという特長があります。
・FRPの弱点は伸縮性がないことで、変形の量が大きい木造の広いバルコニーやベランダの防水には不向きです。
・【FRP防水】は他の防水方法よりも少し費用が高めです。
御覧いただきありがとうございました。