外壁塗装などに使われる足場について徹底解説③【番外編】世界の「足場」事情
建物を建設するうえで「足場」が必要不可欠――。
これは万国共通ですが、国や地域ごとに建物の部材や構造が異なるように、「足場」もまた、国や地域ごとに部材や構造が異なります。
例えば、日本で「足場」というと「鋼製」のものを思い浮かべる方が多いと思いますが、近隣の東南アジア諸国のなかには、「竹製」の「足場」が一般的な国々も存在します。
さらに、世界各地には、思わずはっとするような、複雑かつ緻密な「足場」も・・・。
このように、ひと言で「足場」と言っても、その部材や組み方は国や地域、時代ごとに千差万別なのです。
そんな世界の「足場」について、今回は解説します。
香港の「足場」
日本では鉄パイプや鉄板を組みたてる「足場」ですが、香港では竹を縦横にナイロンのひもで縛って組んでいきます。
超高層ビルでも同様で、建物の周りを竹がぐるりと取り囲みます。
あの100万ドルの夜景もこの竹の「足場」で作られています。
なぜ、竹を使うのでしょうか。
最大の理由は「安いから」。
同じ長さの竹と鉄パイプでは、値段が5倍以上違うのだそうです。
香港では中国から竹を輸入しており、長くて質の良い竹材を安価で入手できます。
軽量でもあるので組み立てや解体も楽というのもメリットです。
香港は亜熱帯地域で高温多湿の為、「足場」が鉄だと錆びやすいというところで、竹を使用するとも言われています。
竹は湿気を帯びることでよく締まり、丈夫になるといいます。
そして、あの適度な「しなり」が「足場」全体に柔軟性を持たせ、台風や衝撃を吸収します。
香港で竹の「足場」を使うのには、ちゃんと理由があったのですね。
また、竹の使い方やつなぎ方、組み方には、決められた方法、技術が必要で、作業には国家資格を持った作業員が当たることになっています。
足場専門の職業訓練校があり、竹の「足場」を組める職人になるには、国が定める一定のコースを履修しなくてはならないそうです。
基礎技術の習得に約1年。理論の授業を1週間受けて、1カ月程度地面で練習したのち、高いところに登って実践練習を行う。
竹柵職人は一般の建築作業員に比べても賃金が高く、人気の職業なのだそうです。
香港の建設現場に組まれた竹製の「足場」。
滑りやすそうで見てるのが怖いくらいです。
でも、彼らにとってはこれが当たり前・・・
絶叫したくなる高所でも、これが当たり前です・・・
これでもしっかりと「足場」が機能しています。
また、世界各国にはまるでアートのように組まれている「足場」があります。
そのいくつかをご紹介します。
スリランカ【アバヤギリ大塔】の「足場」
スリランカの世界遺産【アバヤギリ大塔】の修理の様子です。
紀元前1世紀に建てられたスリランカ大乗仏教の総本山ですが、こう見ると近未来的なアートの作品かと思ってしまうほど、複雑怪奇・奇想天外な「足場」です。
全てボランティアで作業されているそうです。
バルセロナ【サグラダ・ファミリア】の「足場」
建設が始まって以来、死亡事故が起きていない【サグラダ・ファミリア】。
捻れた「足場」を登った60mの高さでおこなわれている作業を考えると、奇跡としか言いようがありません。
モナコのとある建設現場の「足場」
こちらはモナコの建設現場に組まれた「足場」の写真です。
ここまでくると複雑すぎて、もはやどこからどこまでが建物で、どこからどこまでが「足場」なのか、よく見ないと分からないです。
日本にも忘れてはならない「足場」の絶景があります。
少し前から日光にある川俣ダムが話題になっていますね。
こちらの魅力もご紹介します。
日光の川俣ダムの「足場」
日光にある川俣ダムで「工事のために両岸ののり面に設置されている足場が迫力がある」と話題になっています。
「足場」の高さが約90メートルにもおよぶため、紅葉目当ての観光客にも人気のスポットになっています。
なかなか見ることのできない人口と自然が作り上げた見事な絶景です。
そもそもどうして、このような大がかりな工事をしているのでしょうか
長寿命化のための「アンカー工更新」工事
川俣ダムはアーチ式のダムであることから、ダム建設当時に、ダムを支える基礎岩盤にアンカーを設置し、岩盤全体を一体化することにより、強固にする対策が行われています。
要は岩盤補強です。
ダム完成後(1966年完成)約50年が経過しており、予防保全の観点から岩盤PS工(アンカー工法)を更新し、長寿命化対策を行うものです。
※アンカー(アンカー工法)とは
アンカーとは、世界的には「岩盤や土砂に削孔後に孔内に設置され、深部をグラウトを定着された後に緊張されたテンドン」である。
テンドンとはPC鋼材(鋼より線、鋼棒)を束ねた引張り材で、様々な機材が組み込まれた「アンカーシステム」として現地に設置されます。
アンカー工法とは、アンカーシステムに緊張力を与えて対象物を緊結することで安定化させる技術です。
工事期間は2020年に完成予定となっているようですが、工事の進捗状況により、工期が伸びる場合もあります。
ですが、「足場」は工事進行に応じて徐々に解体されてしまうとのことなので、この機会に川俣ダムの「足場」を目に収めておきたいですね。
◎ まとめ ◎
世界の「足場」事情はいかがでしたか?
香港の竹で組まれている「足場」には圧巻でした。
一見危なっかしく見えますが、ちゃんと竹の特長を活かしていて、尚且つ作業員に資格がないと組むことができないなど、安全対策もしっかりできているのですね。
日本の川俣ダムは筆者も見に行きましたが、足がすくみそうでしたが、ずーと見ていられる程の光景でした。
完成する前の「足場」がまだ多く設置されている時に、是非見に行ってみてください。
御覧いただきありがとうございました。
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