【和瓦屋根】和瓦屋根について徹底解説!~瓦屋根は日本人の心~
日本人が心落ち着く和瓦屋根
瓦屋根の種類と特徴
日本人にとって馴染み深く、また、どっしりとした雰囲気を持つ瓦の屋根。
スレートやガルバリウム鋼板という軽量化された屋根材の普及が高い中、まだまだ屋根材として瓦を使用される方も多くいらっしゃいます。
古民家風の家屋やカフェなどの人気もあり、瓦屋根の需要も少なくありません。
そんな瓦のことを、どれくらいご存知でしょうか。
今回は瓦について、徹底解説します。
◎瓦の種類とその特長
瓦は全て同じではなく、粘土系とセメント系の2種類があります。
さらに粘土系は焼き物の瓦で、釉薬瓦と無釉薬瓦に分かれます。
①粘土瓦(釉薬瓦)
粘土を成形後、ガラス質の釉薬を塗布してから高温で焼き上げた瓦で、色やツヤに変化を付けることが出来、『陶器瓦』とも呼ばれています。
釉薬によって瓦の表面がコーティングされているため、水が染み込むことがなく、長年に渡って美しい状態を保ちます。
また、豊富なカラーバリエーションや形状があることから、和風の家だけにとどまらず、洋風の家にも使用することが出来ます。
耐久性と耐水性に優れ、色あせもしにくい釉薬瓦の耐用年数は50~60年ですので、特別なことが起きない限りは、メンテナンスフリーと言えるでしょう。
しかし瓦と共に屋根を構成している漆喰や、ルーフィングと呼ばれる防水シートの耐用年数は、瓦程長いものではありません。
屋根材が瓦であっても、定期的に点検を受けましょう。
②粘土瓦(無釉薬瓦)
釉薬を塗布しないで焼き上げる無釉薬瓦には、『いぶし瓦』や『素焼き瓦』があります。
釉薬瓦と比べて、耐久性に劣ることがデメリットですが、意匠性やデザイン性が非常に優れているため、和風洋風問わず、長年愛され続けています。
いぶし瓦は焼き上げた後に燻化(いぶす工程)させ、瓦の表面に炭素の膜を施した銀色の瓦で、現在でも日本建築における屋根材として、揺るぎのない人気があります。
炭素の膜によって味わいのある黒や銀色となったいぶし瓦に太陽の光が反射することで、光沢のある渋い表現を醸し出しているのが特長です。
耐用年数は30~60年とされていますが、経年劣化によって表面の炭素膜が剥がれると、色や耐水性も落ちてしまいます。
その場合は、補修が必要になります。
素焼き瓦は、粘土を焼き上げた時の色がそのまま活かされるため、自然な風合いを堪能することができます。
酸化炎焼成による赤色のため、別名『赤瓦』と呼ばれることもあり、ヨーロッパの港町などでもよく見かけますので、和風の家よりは洋風の家の方がしっくり来るでしょう。
耐用年数は40~50年程度です。
③セメント瓦・コンクリート瓦
セメント瓦、コンクリート瓦は、『セメント』、『水』、『砂』を主な原料としています。
粘土瓦と違って焼き物ではないため、成形の精度が非常に高いことが特長です。
カラーバリエーションやデザインも豊富で、寸法狂いも少ないため、施工も容易です。
しかし経年による色あせなどの劣化は、どうしても避けられず、定期的な塗装を施す必要があります。
セメント瓦、コンクリート瓦のいずれも、耐用年数は20~40年とされていますが、10~20年スパンを目安に塗装が必要と考えておかなくてはいけません。
◎粘土瓦の形状の種類
①J形(和瓦・和形瓦)
『J形』の”J”は、”Japanese”を意味しています。
日本で古くからある、波打ったような形状をしています。
『日本瓦』、『和瓦』、『和形瓦』とも呼ばれており、特に陶器瓦に多いタイプです。
湾曲の部分が通気性を確保し、空気の層を作ることによって外気温を伝わりにくくしてくれます。
日本の気候に合った、とても合理的な形状です。
②F形(平板瓦)
『F形』の”F”は、”flat”を意味しています。
凹凸のないスッキリとしたデザインは、洋風の住宅にもよく似合います。
③S形(スパニッシュ瓦)
『S形』の”S”は、アルファベットのSの字のような瓦という意味合いもありますが、”Spanish瓦”を意味していると言われています。
大きく波打った形状のため、陰影がとても美しく、素焼き瓦やセメント瓦などで、洋風デザインに仕上げたい場合に用いられることが多い形状です。
◎瓦屋根のメリット
①耐用年数が長い
奈良県の元興寺では、今でも1400年以上も前の瓦が現役で、しっかりとその機能を果たしています。
さすがにこれは特殊な例としても、一般の長寿命住宅から考えると、瓦はピッタリな耐久性を持っていると言えます。
瓦は高温で粘土を焼いて作られていますので、瓦そのものの耐用年数は50年以上です。
②メンテナンスコストを抑えることが出来る
瓦以外の屋根材と比べると、メンテナンス費用を抑えることが出来ます。
部分的に割れたりヒビが入ったりした場合は、部分的な葺き替え工事が可能です。
また、定期的に漆喰やルーフィング(屋根の下地部分)のメンテナンスを行っていれば、新しく瓦を葺き替える必要もありません。
築年数35年の間のメンテナンスコストで、各屋根材のメンテナンスコストを比較した場合、瓦屋根がもっとも安価となります。
③表面の色が劣化しない
粘土瓦(釉薬瓦)は塗装製品ではなく、成形したものを焼き上げるため、年数が経っても再塗装の心配をする必要がありません。
屋根塗装は10年を目安に行う良いとされていますので、その必要がないというのは大きなメリットです。
④デザインが豊富
『J形』、『F形』、『S形』といった形状の種類から見ても分かるように、多くのデザインがあります。
カラーバリエーションも豊富なため、和風の家だけではなく、洋風の家にも合うものが増えてきました。
⑤遮音性、断熱性が高い
瓦は密度の高い屋根材です。
また構造的に、屋根の下地部分と屋根材(瓦)の間に空気層があることから、雨音を抑えることが出来たり、熱を通しにくくなっていたりします。
つまり言い換えると、遮音性と断熱性が高いということです。
特に遮音性については、強調したいメリットです。
屋根と天井の間に『小屋裏』が設けられている場合ですと、どの屋根材であっても雨音は気になりません。
ところが、小屋裏が設けられていない造りの場合は、強めの雨が降った際は、その雨音が耳に付くことがあります。
特にガルバリウム鋼板の屋根でゲリラ豪雨があった場合は、『近くに居るのに会話が困難だと感じるほど』、『テレビの音が聞こえにくくなるほど』雨音がするという声もあります。
⑥結露が起こりにくい
遮音性、断熱性が高いことと原理は同じで、屋根の下地部分と屋根材(瓦)の間に空気層があることから通気が良くなり、結露が起こりにくくなっています。
結露は建物の寿命を縮め、結露からカビやシロアリの繁殖に繋がる可能性も高くなりますので、大きなメリットと言えるでしょう。
◎瓦屋根のデメリット
①他の屋根材と比較すると耐震性に劣る
瓦は1枚の重さが約2~3kgあります。
それに加えて、使用する枚数も多くなるため、かなりの重量が屋根にかかることになります。
和瓦は陶器製になるため、他の屋根材と比べると重く、耐震性が低くなってしまうことは否めません。
②初期費用が高い
瓦そのものが、他の屋根材よりも高額になることに加えて、施工するには専門的な技術と豊富な経験を持った瓦屋根施工者が必要となります。
また、施工そのものにも、他の屋根材と比べて手間と時間が掛かります。
このことから、材料費込みでスレート屋根の1.5~2倍の費用が掛かってしまいます。
新築で家を建てる際、少しでもコストカットをしたいと考えれば、瓦屋根は真っ先に除外されてしまうことが多いのです。
◎他の屋根材との比較
新築で建てる際、そしてリフォームやメンテナンスをする際は、他の屋根材と比較検討することをオススメします。
ここでは瓦屋根の他に、よく屋根材として使用されているスレートと、ガルバリウム鋼板について、簡単にご紹介します。
①スレート瓦
スレートは、新築住宅で多く使用されている屋根材になります。
薄い板状になっており、施工性やメンテナンス性が良いことが特長です。
また軽量のため、屋根や建物全体への負担が少なく、耐震性が高いこともメリットと言えます。
しかし、屋根材そのものの厚みがあまりないため、人が乗るとその体重で割れてしまうこともあります。
また、シンプルなデザインのために見た目が単調になりやすく、屋根材表面はザラザラしているため、雨や湿気の多い地域では苔やカビが生えやすく、美観を損ねてしまうというデメリットもあります。
②ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、金属製の屋根材になります。
非常に軽量で、耐久性や耐震性に優れているのが特長です。
さらに断熱材を入れることで、建物内の断熱効果を高める効果を持っています。
デザインやカラーバリエーションも豊富にあることから、洋風の家だけではなく和風の家にも合います。
スレート屋根の上からカバー工法(重ね葺き)で屋根リフォーム工事が出来るため、ここ数年で人気が高くなっている屋根材です。
しかし、比較的高価なことや、浸水に弱いために、屋根にはある程度の勾配を取らなくてはいけないというデメリットがあります。
◎瓦屋根のメンテナンスについて
建物の耐久性や美観を保つために、屋根のメンテナンスを行うことは重要なポイントとなります。
建物内に雨漏りを確認してからメンテナンスをすると、タイミング的にかなり遅いということも多くあります。
ここでは、代表的なメンテナンスについてご紹介します。
①葺き直し
葺き直しとは、既存の屋根材(瓦)を撤去し、屋根下地部分のルーフィング(防水シート)や漆喰等を新しくし、再び元の屋根材(瓦)を葺く工法です。
次に紹介する葺き替えと違い、瓦を再利用することができるため、コストを抑えつつ劣化しやすい屋根下地や漆喰部分を補修することが出来、コストパフォーマンスの良い方法と言えます。
デメリットとしては、既存の屋根材を使用するため、見た目は変更できないという点です。
外観から一新したいという目的があれば、葺き替えや重ね葺き(カバー工法)を選ぶと良いでしょう。
また、築年数が50年以上経過している『いぶし瓦』や『セメント瓦』の場合は、瓦本体がかなり劣化していることが多いため、この工法はオススメできません。
②葺き替え
葺き替えとは、既存の屋根材(瓦)撤去し、新しい屋根材に置き換える工法です。
屋根材を全て剥がすため、下地の劣化箇所も補修することが出来、雨漏りや自然災害からの危険を防ぐことができるというメリットがあります。
また、瓦から瓦だけではなく、瓦から軽い素材であるスレートやガルバリウム鋼板に葺き替えを行う場合は、建物の軽量化によって、耐震性の向上も期待することが出来ます。
ただし、既存屋根材の撤去費用や廃材処分費など、葺き直しと比較すると、どうしても費用が高額になってしまうことがデメリットと言えるでしょう。
◎まとめ
今回は瓦について徹底解説しました。
瓦は耐久性が高く、外観も美しい、優れた屋根材と言えます。
しかし、瓦そのものの耐久性は高くとも、屋根を構成する瓦以外の部分の寿命は、早くて10年強でやってきます。
『我が家の屋根は瓦だから、ノーメンテナンスでも大丈夫』と思わず、定期的に専門業者の点検を受けましょう。
また、10年未満であっても、台風や強風の後などに違和感を覚えた場合は、早めに業者へ依頼されることをオススメします。
屋根は簡単に取り替えることが出来ません。
そのため、それぞれのメリット・デメリットを良く理解することが重要です。
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