【屋根外壁の音が気になる】遮音,防音について徹底追及
今年も梅雨の季節がやって来ました。
梅雨が終われば、今度は台風の季節がやってきます。
『今日は雨が強いな』、『だいぶ風が強いな』と思われるレベルだとまだ良いのですが、建物によっては雨や風の音によってストレスを感じてしまう場合もあります。
『何とか出来る手立てがあるのであれば、そのストレスから解放されたい』と思うのは、当然です。
そこで今日は、静かで快適な暮らしを手に入れるため、音について徹底追求します。
◎騒音対策の基本
騒音対策を考える際によく使用される用語として、『防音』、『遮音』、『吸音』、『制振』という4種類があります。
最終的な効果としては繋がるのですが、それぞれの違いをきちんと区別出来るという方はそう多くはないのではないでしょうか。
①防音とは
外からの騒音が屋内に入ってきたり、反対に屋内の音が外へ漏れることを防いだりすることを言います。
防音というのは概念的なものであり、具体的な方法を意味する言葉ではありません。
防音するための具体策が、これから紹介する『遮音』と『吸音』になります。
防音対策や防音素材と言われるものは、遮音対策や吸音対策のことであったり、その素材のことであったりを指しています。
②遮音とは
文字通り音を遮ることを言います。
音は空気の振動によって伝わりますが、壁などが空気と一緒に振動してしまうと、壁の反対側へと音が伝わってしまいます。
空気の振動を伝えない素材を使用することで、遮音効果の機能が発揮されます。
重量のあるものは、空気の振動を伝えにくいため、例えば鉄筋コンクリート造の建物は遮音性に優れていることになります。
遮音は、手っ取り早く確実に行うことのできる防音対策の1つだといわれています。
③吸音とは
音をブロックするのではなく吸収することを言います。
吸音の仕組みとしては、小さな穴がたくさん開いている素材によって、一旦スポンジのように音を取り込み、素材の中で拡散させることで音を吸収させます。
吸音は防音に繋がるだけではなく、音の跳ね返りや共振なども防ぐため、学校の音楽室やシアタールーム、ピアノなどの楽器を利用する部屋の音響効果を高める場合にも重要となります。
建物や部屋の外側に音が漏れず、室内でも音がクリアに聞こえるのが特長ですが、吸音性を高め過ぎた場合は反響音が全く無くなるため、物足りなさを感じることもあります。
④制振とは
建物の振動を制御することを言います。
建物が揺れを一旦受け止め、制振装置によって素早く揺れを静める仕組みで、主にマンションでの騒音対策として採用されているケースが多く見られます。
音には空気振動で伝わるものと、マンション等の集合住宅において足音が聞こえるなど、固体で伝わるものがあります。
足音以外にも水道やトイレで水を流す音や、給排水管を通して聞こえる音も固体音になります。
通常は空気振動によって伝わる音の吸音と、外部からの音や外へ出ようとする音を遮る遮音を組み合わせることで、騒音対策が取られます。
◎音の要素と表し方
①音の大きさを表す
ホン:音の聴覚的な強さレベル、音全体の大きさを表しています。
デシベル(dB):周波数(ヘルツ:Hz)毎の音の大きさを表しています。
②音の高さを表す
ヘルツ(Hz):音は空気の振動によって発生します。
音の高さは1秒間に何回振動するのかによって決まりますが、この振動数のことを周波数と言い、一般的にヘルツ(Hz)という単位が使用されています。
人は20Hz(振動がゆっくりで低い音)~20,000Hz(振動が速く高い音)程度の音を聞くことが出来ると言われていますが、年を重ねると聴力が衰え、高い音が聞こえにくくなるといった症状が表れます。
③音色
心地良い音、響きのある音など、様々な表現で使われています。
人は同じ周波数であっても、音波の形が異なることで、その音色の違いを区別しています。
また、音が鳴る時には、様々な周波数を持った倍音が同時に鳴っています。
倍音も含めた音の構成の違いが、音色の違いとして認識されるということになります。
◎音の種類と身近な音の大きさ
日常生活の中で感じている音の大部分は、空気や物資の振動によって生まれています。
音は『大きさ』、『高さ』、『音色』の3つの要素によって成り立っています。
そのうち大きさや強さを表す『デシベル(dB)』を切り取って、私たちの暮らしで身近にある音の種類や大きさを見て行きましょう。
・ 10dB:聞こえる事のできる限界(極めて静かな世界)、呼吸音、無音に近い蝶の羽ばたき
・ 20dB:やっと音として聞こえる程度、寝息、消しゴムの音、木の葉のふれあう音、雪の降る音、置時計の秒針の音(前方1m)
・ 30dB:ささやき声、洋服を着る音、鉛筆での執筆、夜の住宅街、街の静けさ
・ 40dB:すやすや居眠り、換気扇の弱、図書館、閑静な住宅地、小雨の音
・ 50dB:ひそひそ話、直近で聞く家庭用エアコンの室外機、静かな事務所の中、静かな公園、博物館
・ 60dB:日常生活での一般的な会話、テレビの小音、トイレの洗浄音、デパート店内、静かな乗用車、学校の授業、銀行内の音
・ 70dB:大きな声、テレビ中音、ヘアドライヤー、掃除機、騒々しい事務所の中、電車の車内、新幹線の車内、騒々しい街頭、夕立、レストラン
・ 80dB:電話、ピアノ(正面1m)、パチンコ店内、ボーリング場、機械工場、バイクの走行音、交通量の多い道路、地下鉄の車内、
・ 90dB:犬の鳴き声(正面5m)、芝刈り機、騒々しい工場の中、地下鉄の車内、滝の近く
・100dB:電車が通過する時のガード下、地下鉄の構内
・110dB:直近で聞く自動車のクラクション、地下繁華街の音、ヘリコプターの近く
・120dB:オーケストラの演奏、新幹線の鉄橋通過、飛行機エンジンの近く、落雷
・130dB:飛行機のエンジンの音、直近の落雷
・140dB:直近の飛行機ジェットエンジン
・180dB:ロケットの発射音
一般的な目安としては、70dB以上になると『うるさい』と感じる人が増えてきます。
また、85dB以上の音を継続して聞いていた場合、後々難聴など耳のトラブルが発生する場合があるため、注意が必要です。
また、屋内で静かで快適な暮らしが出来る騒音レベルは、40dB以下と言われています。
◎具体的な騒音対策(建物の外側から)
不快だと感じる音について騒音対策をすることは、落ち着いた快適な住まいにするために必要不可欠です。
重量のある材料に遮音効果が高いという原理から言えば、分厚い鉄筋コンクリート構造の建物に防音サッシや二重サッシを取り付ける方法がベストかもしれませんが、全ての人がこの方法の採用が可能というわけではありません。
①屋根
屋根材の種類や雨の強さによって、雨音が屋根に叩きつけられる音が建物内に響くことがあります。
屋根の構造から雨音に対する防音対策を考えると良いでしょう。
屋根材が瓦やスレートの場合、雨音は殆ど気になることはないでしょう。
しかし、金属系やトタン屋根など、薄い鋼板の屋根の場合はそうも言っていられません。
屋根の騒音対策として、防音シートや防音マット、遮音シートなどがあります。
また、屋根材として、製造過程から石粒が付いている鋼板、ジンカリウム鋼板、アスファルトシングル材が、軽量な上お値段的にも手頃です。
これらは『雨音のしない屋根材』とも言われています。
既存の屋根がスレート材であれば、断熱材の付随したスレート材でカバー工法(屋根を二枚重ねる工法)を選ぶのも良いでしょう。
②外壁
いくら見た目には美しくても、音の行き来する外壁だと暮らしにくいものです。
既存の外壁に石膏ボードを二重に貼り、更に石膏ボードの間に遮音シートを入れるという方法があります。
ここまですると、鉄筋コンクリート造のマンションと概ね同程度の遮音性能を持っていることになります。
③窓(サッシ)
音はほんの僅かな隙間であっても入ってきます。
窓は建物の中で大きな開口部となるため、音の行き来が激しくなる場所でもあります。
屋根や外壁からの騒音対策ばかり考えても、窓の騒音対策も同時に行わなければ意味がなくなってしまいます。
一般的なサッシから防音サッシや二重サッシにするなどして、防音性を高めると良いでしょう。
◎具体的な騒音対策(建物の内側から)
建物内における騒音対策として一般的に利用されるものとして、『グラスウール』、『ウレタンフォーム』、『ロックウール』、『石膏ボート』、『遮音シート』があります。
①グラスウール
グラスウールは吸音材として広く使われています。
ガラス繊維からなる綿のような材質で出来ており、吸音性だけではなく防火性や断熱性にも優れています。
ロックウールと比べると、安価であることも大きな特長です。
断熱性に優れているという点から、断熱材としても使用できるため一見万能素材のように思えるのですが、吸湿性があり、濡れるとその性能が大きく低下してしまいます。
グラスウールを吸音材として使用する場合は結露対策も併せて行わなくてはいけません。
②ウレタンフォーム
グラスウール同様、ウレタンフォームも吸音材として広く使われています。
主成分はポリウレタン樹脂で、吸音材だけではなくシーリング材や床材、クッション材など、吸音材以外の他の用途としても幅広く利用されています。
吸音の仕組みとしては、ウレタンフォームの気泡部分に空気振動が伝わることで空気摩擦が生じ、音エネルギーが熱エネルギーに変換され、音の振動を吸収します。
③ロックウール
ロックウールは安山岩や玄武岩などを高温で溶かし、細い繊維状にした吸音材です。
アスベストを一切含まないため、安心して使うことが出来ます。
保湿性や断熱性も優れているため、吸音材としてだけでなく、防火材、断熱材としての用途も兼ね備えています。
また、床や壁、天井など、建物内の殆どの場所で使用することが出来るのも特長です。
④石膏ボードと遮音シート
壁などの遮音性を向上させるために使用されるのが、石膏ボードと遮音シートです。
石膏ボードは耐火性にも優れていることから、遮音材としてだけではなく、内装下地材としても広く使用される建材です。
遮音シートは薄いものをイメージするかもしれませんが、遮音するには重さが欠かせないため、重量のある素材となっています。
◎騒音となりやすい生活音
生活音という観点から、どのような音が騒音だと感じやすいのかを見ていきます。
①足音
日常生活を送る上で、足音をさせないということは不可能です。
特にかかと歩きと言って、かかとを蹴り上げるような歩き方をしたり、バタバタと走ったりすると、階下だけではなく隣の部屋まで足音が響く場合があります。
②テレビ
テレビを見る時間帯や番組の内容によって、騒音になってしまう場合があります。
特にバラエティ番組や、低音の強い音楽が流れているような場面では、自分の想像以上に他の部屋へ音が漏れていることが多くあります。
③ドアの開け閉め
頻度が高いわけではありませんが、ドアの開閉音が騒音となる場合もあります。
木製のドアですと、ドアの軋みなどで音がすることがあります。
④水の流れる音
意外と気が付かないのが水の音です。
2階建て以上の住居で、各階にトイレが設置してある設計が増えていますが、間取りによってはトイレの流水音が気になることがあります。
⑤洗濯機
屋外に洗濯機が置いてある場合は勿論ですが、屋内に置いてある洗濯機も意外と大きな音を響かせています。
特に脱水時は、洗濯槽が高速回転する事で発生する遠心力を利用して脱水していますので、どうしても洗濯機がガタガタと音を立ててしまいます。
◎DIYで出来る騒音対策
大掛かりな工事をしなくとも、簡単にDIYで出来る騒音対策があります。
①カーペットやラグを敷く
足音などに特に有効なのが、床面にカーペットやラグを敷くことです。
高価なものでなくても、ホームセンターや大型量販店で販売されているものを敷くだけで、気になる足音を軽減させてくれます。
足触りの良いジョイントマットであれば、汚れてもその部分だけを外して洗うことが出来るので、何かと重宝するでしょう。
フローリングの上にパネル型の置き畳を配置するのも効果がありますし、簡易的な和室コーナーを造ることも出来ます。
②家具の配置を変更する
音が気になる部屋側の壁面をできるだけ覆うように、家具の配置を変更します。
本棚やラック、タンスなど、出来るだけ重量のある家具を配置することで、家具が擬似的な厚い壁の役割をします。
配置した家具にはホンや衣類などの荷物を隙間なく詰めると、より防音効果がアップします。
③カーテンを遮音カーテンにする
窓などの大きな開口部からは、音の出入りがどうしても多くなってしまいます。
一般のカーテンから防音カーテン、遮音カーテン、吸音カーテンなどに変えてみましょう。
選ぶ時には窓より大きなサイズのものにしましょう。
設置の際は、窓とカーテンの隙間を出来るだけ少なくし、窓を覆うようにすることがポイントです。
隙間が出来ると音の出入りに繋がるため、防音効果が低下してしまいます。
④遮音シートや防音シートを設置する
ここまで挙げた騒音対策を試しても、想像していた様な効果が得られなかったと感じた方や、より精度の高い防音効果を望んでいるという方に試して欲しい方法です。
音の発生源となる部屋の床に、遮音シートや防音シートを設置します。
床面に設置する場合は、家具の下にも敷かなければ意味がありません。
シートと言っても壁に貼り付けるタイプのものや、床に敷くマットタイプなど、その種類やデザインも多種多様です。
そのため、防音効果を高めつつ自分好みの部屋にカスタマイズすることが出来ます。
床面だけでなく壁面に貼り付けるタイプの遮音シートや防音シートも販売されていますが、こちらも色やデザインが豊富にありますので色々と組み合わせてみても良いでしょう。
◎まとめ
今回は音について様々な角度から説明しました。
空気や温度、結露などと同じように、音の感じ方も個人差があります。
静かな環境でないと集中出来ないという人もいれば、周りで誰かが話している環境でも影響はないという人もいます。
虫の声が聞こえてくるような静かな場所で暮らしている人からすれば、ジェット機の飛び交う飛行場の音は大きな騒音になるでしょう。
しかしそこで長らく働いている人にとては、もう当たり前になっている音かもしれません。
様々な感じ方をする人同士が同じ家で快適に過ごすためにはどうしたら良いのか。
そう思ったら、今回の情報を思い出してください。
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